自分でサービスを開発して2億円で売却する確率 vs 宝くじで2億円当てる確率【日米比較版】
600万円を賭けて、2億円を手にする。日本とアメリカ、どちらが現実的か
「600万円を投資して、2億円を手にする」という目標があります。月5万円ずつ10年間宝くじを買い続けるか、自分でWebサービスを開発して売却するか。どちらの確率が高いのでしょうか。
単純な確率では宝くじの方が高く見えます。しかし、この記事では日本とアメリカのM&A市場の違いを考慮すると、結論が大きく変わることを示します。
宝くじで2億円当てる確率:これは変わらない
月5万円で10年間、確率は0.5%
宝くじの確率は、日本でもアメリカでも変わりません。まず条件を整理します。
- 毎月の購入金額:5万円
- 購入期間:10年間(120ヶ月)
- 総投資額:600万円
日本の主要な宝くじの1等当選確率は以下の通りです。
| 宝くじの種類 | 1等賞金 | 1等当選確率 |
|---|---|---|
| ジャンボ宝くじ | 7億円 | 約1/2,000万 |
| ロト7 | 最高10億円 | 約1/1,029万 |
| ロト6 | 最高6億円 | 約1/610万 |
最も確率が高いロト6で計算すると、月5万円で250口、10年間で30,000口購入できます。10年間で1等が当たる確率は**約0.49%**です。
200人が同じことをしても、1人当たるかどうかという確率です。
サービス開発で2億円売却する確率:日本とアメリカで大きく異なる
ここからが重要です。サービス開発による売却の確率は、開発する場所によって大きく変わります。
日本市場での確率:約0.056%
日本でのスタートアップの基礎データを確認します。
- スタートアップの5年生存率:約15-20%
- M&A(売却)に至る確率:生存企業の1-5%
- 2億円以上で売却できる確率:M&A実施企業の10-15%
これを掛け合わせると、保守的に計算して**約0.056%**になります。100人が起業しても、2億円以上で売却できるのは0.056人です。
アメリカ市場での確率:日本の4〜10倍
アメリカではスタートアップのイグジットの80%以上がM&Aで、IPO(株式公開)は20%未満です。一方、日本ではIPOが主流で、M&Aはまだ少数派です。
北米企業はヨーロッパ企業の4倍、アジア企業の7〜10倍の頻度でスタートアップを買収しています。
この市場規模の違いは、確率に直接影響します。アメリカでサービスを開発した場合の2億円以上での売却確率は、保守的に見積もっても**0.2〜0.5%**程度になります。
| 場所 | 10年間での成功確率 | 宝くじとの比較 |
|---|---|---|
| 宝くじ(ロト6) | 約0.5% | - |
| 日本でのサービス開発 | 約0.056% | 宝くじの1/9 |
| アメリカでのサービス開発 | 約0.2〜0.5% | 宝くじと同程度 |
| 経験者がアメリカで開発 | 約1〜3% | 宝くじの2〜6倍 |
アメリカ市場では、宝くじと同等かそれ以上の確率になります。
なぜアメリカではM&Aの確率が高いのか
1. M&A市場の規模が違う
2016年から2018年の各国のベンチャー企業M&A件数を比較すると、アメリカの件数が他国を大きく引き離しています。 日本のM&A件数は、他国と比較しても低い水準です。
アメリカでは、大企業がスタートアップを買収することが一般的です。Google、Apple、Facebook、Amazonなどの企業は、数百から数千のスタートアップを買収してきました。
2. 買収文化が根付いている
アメリカでは、以下の理由でM&Aが活発です。
- VCの投資回収手段として確立されている
- 大企業の技術獲得手段として定着している
- 起業家も最初からM&Aを出口として想定している
2024年の調査では、CEOの多くがディールメイキングを短期的な優先課題への対処手段として注目しており、特にテクノロジー、革新的なスタートアップ企業などを取り込みたいと考えています。
3. 売却価格が高い傾向にある
アメリカ市場では、技術力や成長性が評価されれば、日本よりも高い価格で売却できる傾向があります。市場規模が大きく、競合する買い手企業も多いため、価格競争が起きやすいのです。
単純な確率比較では見えない4つの違い
ここまでの確率を見ると、「アメリカでサービス開発すれば宝くじと同じくらいか」と思うかもしれません。しかし、この比較には重要な要素が抜けています。
1. 失敗した時に何が残るか
宝くじで600万円を使って外れた場合、何も残りません。600万円は完全に消えます。
サービス開発に時間とお金を使って失敗した場合、プログラミングスキル、マーケティングの知識、失敗から学んだ経験が残ります。これらは次のプロジェクトや、就職先でも活かせます。
2. 中間的な成功の可能性
宝くじは「2億円当たるか、0円か」の二択です。
サービス開発の場合、2億円に届かなくても売却できる可能性があります。2020年から2021年にかけて、10億円以上のM&A案件が20件以上発生しており 、それ以下の金額での売却事例はさらに多く存在します。
アメリカ市場では特に、500万円〜5,000万円規模の小型M&Aも活発です。
3. 繰り返し挑戦できるか
宝くじは毎月5万円を使い続けますが、確率は常に固定です。何度買っても、次回の当選確率は変わりません。
サービス開発は違います。1回目に失敗しても、そこから学んだことを2回目に活かせます。特にアメリカでは「失敗した起業家」に対する評価が高く、2回目、3回目の挑戦の方が成功確率が上がる傾向があります。
4. コントロールできるか
宝くじは完全に運任せです。どれだけ真剣に番号を選んでも、当選確率は変わりません。
サービス開発は、以下のような行動で確率を改善できます。
アメリカ市場で確率を上げる方法
- 需要の高い市場を選ぶ(AI、SaaS、フィンテックなど)
- 英語で開発し、グローバル市場を狙う
- シリコンバレーのネットワークにアクセスする
- Y Combinatorなどのアクセラレーターに参加する
- VCから資金調達を行い、成長を加速させる
アメリカ市場でのM&A事例は豊富にある
買収価格の規模
2024年、ベンチャーキャピタル支援企業のM&Aは670億ドル(約10兆円)に達し、1,300件以上の取引が行われました。 ただし、取引価格が公開されているのは全体の16%程度で、実際の件数はさらに多いと推測されます。
2億円は現実的な目標
アメリカ市場では、2億円(約200万ドル)という売却価格は小規模な部類に入ります。以下のような事例が日常的に発生しています。
- 数百万ドル規模:収益のあるSaaSツール、ニッチなB2Bサービス
- 数千万ドル規模:ユーザー数の多いアプリ、革新的な技術
- 1億ドル以上:急成長中のスタートアップ
日本人でもアクセスできるか
日本人がアメリカ市場で売却に成功した事例も存在します。重要なのは以下の点です。
- 製品が英語で使える
- アメリカ市場のニーズに応えている
- グローバルユーザーがいる
物理的にアメリカにいる必要はありません。リモートでアメリカ市場向けのサービスを開発し、オンラインで売却交渉することも可能です。
期待値で考える:どちらが合理的か
宝くじの期待値
宝くじの還元率は約50%です。
- 投資額:600万円
- 期待リターン:約300万円
- 期待損失:約300万円
日本でのサービス開発の期待値
- 投資額:時間コスト + 数十万円程度
- 2億円売却の確率:約0.056%
- 期待値:低い
アメリカでのサービス開発の期待値
- 投資額:時間コスト + 数十万円程度
- 2億円以上売却の確率:0.2〜3%(スキルによる)
- 中間的な成功(100万円〜5,000万円)の可能性:10〜20%
- 失敗してもスキルが残る
期待値では、アメリカ市場でのサービス開発が最も高くなります。
日本人がアメリカ市場を狙う現実的な戦略
1. 英語でサービスを開発する
日本語ではなく、英語でサービスを提供します。これだけで、潜在的な市場規模が10倍以上になります。
2. グローバルニッチを狙う
日本市場では小さすぎる市場でも、グローバルでは十分な規模があります。例えば以下のような分野です。
- 特定の業界向けSaaSツール
- ニッチな技術者向けツール
- 特定の趣味や関心に特化したサービス
3. オンラインで売却交渉を行う
物理的にアメリカにいなくても、オンラインでM&Aのマッチングサイトを利用できます。代表的なものは以下の通りです。
- Flippa(小規模案件が多い)
- Empire Flippers(中規模案件)
- FE International(大規模案件)
4. 最初から売却を意識した設計にする
以下の要素は、売却価格を高めます。
- 月次経常収益(MRR)がある
- ユーザー数が成長している
- 運営が自動化されている
- ドキュメントが整備されている
結論:あなたはどちらを選ぶべきか
純粋に確率だけで判断するなら
| 選択肢 | 成功確率 | 期待値 |
|---|---|---|
| 宝くじ | 0.5% | 低い |
| 日本でサービス開発 | 0.056% | 低い |
| アメリカでサービス開発 | 0.2〜3% | 高い |
合理的な判断をするなら
以下の条件に1つでも当てはまるなら、アメリカ市場でのサービス開発を選ぶべきです。
- プログラミングスキルがある、または習得する意欲がある
- 英語である程度コミュニケーションできる
- 失敗から学ぶ姿勢がある
- 2億円でなくても、数百万円〜数千万円の売却で満足できる
- 10年という時間を自己成長に使いたい
逆に、以下の場合は宝くじも選択肢になります。
- 純粋に運試しを楽しみたい
- スキル習得に時間を割けない
- 英語学習のハードルが高い
- 小額を継続的に使える余裕がある
- 外れても経済的に問題ない
日本市場での開発は?
日本市場でのサービス開発も、決して無駄ではありません。以下のメリットがあります。
- 言語の壁がない
- 市場のニーズを理解しやすい
- 法律や商習慣に精通している
ただし、確率の観点では、アメリカ市場を狙う方が有利です。
最終的な答え
単純な確率では宝くじの方が高いですが、以下の理由でアメリカ市場でのサービス開発が最も合理的です。
- 確率が宝くじと同等かそれ以上
- 中間的な成功の可能性がある
- 失敗してもスキルが残る
- 繰り返し挑戦できる
- 努力で確率を改善できる
アメリカではスタートアップのほとんどがM&Aを通じてイグジットを行っており、日本でも創業から間もない企業がM&Aを志向する傾向が増加しています。
重要なのは、それぞれの選択肢の確率と特性を理解した上で、自分の状況と目標に合った選択をすることです。特に、グローバル市場を視野に入れることで、確率が大きく変わることを忘れないでください。
参考記事
日本のM&A市場
アメリカのM&A市場
- The End of the Startup M&A Era? - Tech Startup M&A 2024 Report
- 2024年の米国M&A市場(EY Japan)
- Startup M&A Trends(Crunchbase)